薬害C型肝炎訴訟で、先日国の過失を認める判決が出たが、国側はきょう控訴した。
自分にはあんまり関係が無いと思っている人が多いと思うのだけれど、これは他人事ではない問題だ。C型肝炎のウィルスを持っていて症状が出ていない人は、200万人ともいわれている。その感染の原因のうち、血液から作った薬で、主に出血の予防のために使われたというケースが29万人。発症した人はすでに1万人以上で、進行すると肝硬変、さらには肝ガンへと進むことが多い。
先日ちょっと書いたが、白血病の治療で感染した渡辺謙さんもその一人だ。
私はケガで入院したことも無いし、輸血も受けていないから大丈夫、と思っている人がたくさんいる。でも、女性の皆さんは出産時にイヤでも出血する。実は、大量に出血した際、出血を防ぐために知らないうちに「フィブリノゲン」という血液製剤を投与された人がたくさんいるのだ。もちろん、出産以外でも。
薬害エイズのときに裁判を起こしたのは、血友病の患者さんであった。血友病の患者さんは生まれつき出血しやすく、ちょっと転んだり手を切ったりしただけでも出血が止まらなくなって命に関わる。薬が無ければ生きてはいけなかったのでやむなく血液製剤を使っていた。ただ、やむなくといっても、その薬のせいで命に関わる別の病気にかかるだなんて知らされていなかったし、そのことを医師も国も知って知っていたのにうやむやにされていたから、患者の皆さんは裁判を起こした。
ただし、裁判に勝ったからといって病気が治るわけではない。出口の見えない辛い治療が続き、自分の命がいつ終わるかわからない不安にさらされていることには変わりが無いのだ。
構図は同じなのだが、血友病の患者さんは、自分の病気がどういうもので、投与されている薬が何のための薬なのかを知っていた。C型肝炎の場合は、病気ではない人にまで簡単に投与されていたので(通常分娩は病気ではない)自覚なく感染した人がとても多い。そしてこの薬は当時ミドリ十字(現三菱ウェルファーマ)という会社が売っていた。この名前には皆さん記憶があるのではないだろうか。そう、繰り返すが、構図は同じなのだ。
この問題はフジテレビの報道がずっと追いかけていて、報道をきっかけにして、2年前に厚生労働省が、旧ミドリ十字が血液製剤を納入したメーカーを公表した(これだってずいぶん時間がかかった)。でも、それだけだった。積極的に患者を把握し、治療をするということはしなかった。
潜在患者が200万人となると、これは国の責任で、検査なり治療なりの道筋をつけるべきだと思う。裁判でいうところの責任ではなく、国家としての国民に対する責任という意味だ。でも国はいまだに、もっと小さい範囲での責任について争うというのだ。争うということは、その間このことに対しての対策は何も進まないということを意味する。
私は元公務員だけど、役所の皆さんはいったい何のために働いているんだろうなぁと思う。前任者がやった過ちを守るために、人の命を危険にさらし続けていることがわからないほどバカばっかりじゃないはずなのだ。まぁこんなことは辞めたから言えるのかもしれないけど。
公務員って基本的にはあまり感謝されない。むしろ責められることの方が多いだろう。そういう組織で働く人はどうしても保身に走る。その気持ちはわかるけれど、そろそろ人のために働いてみませんか、公務員の皆さん。頑張っても給与は増えないし大変だと思う。でも、世の中の役に立つように働くのは、目をつぶって耳をふさいで漫然と仕事をするよりずっといいと思うのだけれど。
もちろん、ちゃんと人のために働いている人がたくさんいる。どんな過疎地にでも、相手の顔を見るために郵便物を運んでいた郵便局員の方とか。でも、これからは配達にはそんな余裕は無くなりそうだ。
日本郵政公社は28日、郵便物の集配業務を担う郵便局(集配郵便局)の再編計画を発表した。現在、集配をしている約4700局のうち1048局は業務を近くの局に移し、窓口業務に専念する。再編は07年10月の民営化に向けた合理化の一環で、9月から順次実施する。対象となる局は地方に多く、地元自治体からは「合理化が行き過ぎ、将来は郵便局自体が廃止されるのではないか」との不安も出ている。
(朝日新聞)
まぁ郵政民営化ってこういうことだよね。民営化したからといって国の財政は何も変わらなくて、結局地方の人が不便になっただけ。ついでに言うと、どこの郵便局でも今、配達をする非常勤職員を募集している。配達がアルバイトになっているわけだ。そして、不達や誤配が増えている。
昔は、アルバイトを雇うのは年賀状配達のときぐらいだったのだ。それが通常郵便物に広がっているのだから、配達のレベルが下がるのは当たり前だ。普通郵便だけじゃなく、ゆうパックが不在時に届いたときの対応のまずさは個人的に実感している。宅配便があまりに便利なので、融通が効かないのには呆れてしまう。
結局これが郵政民営化であった。これを成し遂げて、小泉さんは秋に退任なさるわけだ。思った通りであった。
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