安藤美姫ちゃんに思うこと
去年の全日本選手権。3位以内に入れず、表彰式に参加しないことがわかっていた安藤選手は、代々木第一競技場入り口のグッズ売り場を、同じ名古屋の曽根選手とウロウロしていた。
こんなところを普通に歩いていたら大変なことになるんじゃないかと思っていたら、案の定あっという間に観客が彼女を取り囲んだ。その後どうなったかは知らない。
あの時、美姫ちゃんは五輪を完全にあきらめていた。本人に聞いたわけではないが、全身から「シーズンが終わった」という感じが漂っていた。なんでそんなことを覚えているかというと、その空気がとても残念だったからだ。
五輪の選手選考については、いろいろな意見があったが、私は3人目は美姫ちゃんでいいんじゃないかと思っていた。うまくいくかもしれないしうまくいかないかもしれない。でも、この才能がここで終わってしまうのはもったいないと思ったし、本人がもう一度スケートをやる気になるとしたら、五輪に出るのが一番いいという気がしていた。
美姫ちゃんが「しーちゃん」と呼んで慕っていた荒川選手が金メダルを獲得した。祝福にやってきた美姫ちゃんと荒川さんが抱き合っているシーンを覚えている人も多いだろう。そしてその後ろで、私も荒川さんを祝福したいと待っているカナダのミラ・リャンの姿も。
五輪が終わったあと、美姫ちゃんは荒川さんに、バンクーバーまで続けると言ったそうだ。そしてコーチを変え、練習環境を変えた。美姫ちゃんが強化選手から外れたことを大きく報じたスポーツ紙があったが、荒川選手の引退にともなってまた指定されているし、大体にして彼女はトヨタに就職したのだ。お金に関しては何の問題も無い。
マスコミも連盟も信じられなくなった美姫ちゃんが、一番最初にスケートを教わった門奈コーチの元に戻ったのはわかる気がする。ただ、門奈コーチにとっては大変な決断だったのではないかと想像した。子供の頃の美姫ちゃんじゃない、世界レベルの選手なのだから。
スケートアメリカを見て、モロゾフコーチがついていたから、なるほどと思った。日本では門奈コーチにジャンプを見てもらい、振り付けやレベル、試合に向けての調整をモロゾフコーチが見るというのはベストの選択だと思う。
荒川さんがしっかりとレベルを取れるよう、3秒数えるために「ワンアイスクリーム、ツーアイスクリーム」と教えたのは有名な話だが、モロゾフコーチは現在のルールへの理解が高いし、アイスダンスの選手なので複雑なステップを組み立てられる。ショートのストレートラインステップの入りで見せた美姫ちゃんの表情にはゾクっとした。ステップの手前で「さぁ見て!」という顔をする日本人選手がいただろうか。
荒川さんは、いろいろな経験を踏まえて自分の演技を見つけるということを、五輪でやっと叶えることができた。美姫ちゃんは十代でそれに気づいたわけだから、これからもっともっと上手になると思う。楽しみ。
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