スケートバブル
改めて振り返ると、年末年始はスケート番組バブルであった。年末のゴールデンタイムに全日本選手権の放送があるだけでも大変なことなのだが、大晦日の紅白の裏、そして4日と8日にスケートの放送があった。こんなことはずっと続くわけがないのでスケートバブル。まぁスケートが好きなのでありがたいけど。
4日の「ニューイヤーフィギュア」はとても面白かった。エキジビションを採点する大会が日本人選手だけで成立する時代がやってくるなんて夢のようだ。そして、犬を抱えて滑ったあと、エキジビションなのにトリプルアクセルを、それも演技の後半に跳んでしまう真央ちゃんのような選手がいることも夢のよう。
真央ちゃんにライバルはいない。ライバルとされている選手はいて、これからの試合で戦い、勝つことも負けることもあるだろう。私がライバルはいないと書いたのは、真央ちゃんのやりたいことは真央ちゃんの中にしかなく、真央ちゃんの目標も真央ちゃんの中にしかないからだ。他の誰がどうだろうと、心の底から関係がない。
荒川静香さんは良くも悪くも欲の無い人であった。最後の最後に、他の誰がどうだろうと心の底から関係がないと思って演技をしたら、オリンピックで金メダルをとった。長い選手生活と、様々な経験を経てやっとそこにたどりついたのだが、真央ちゃんとの違いは「勝つ気が無い」というところだ。荒川さんは、世界選手権で優勝したときも五輪で優勝したときも、勝つつもりで試合に出てはいなかった。
真央ちゃんは、周りから期待されていることもあるだろうけれど、普通に「世界選手権で優勝して」とか「200点出して」と口にする。世界選手権で、ましてや日本人選手が優勝するなんてとんでもないことなのだけれど、真央ちゃんにとっては自分が頑張ればできるという範囲のことらしい。そしてそのための目標は自分の中にしかない。
今シーズン苦しんだステップからのトリプルアクセルは、全日本で完全に克服してしまった。真央ちゃんは昨シーズンまで、大きなカーブを描くようなラインでトリプルアクセルに入っていた。今シーズンも同じような入り方で、ジャンプの直前にステップを入れていたのだが、全日本のときにはカーブではなく、スピードが落ちないようにストレートに滑りながらステップを入れて跳んでいた。アクセルが跳べるように修正していたのだ。
エキジビションの大会で、愛犬エアロを抱えて滑り、フリップとルッツを跳んだあとに余裕でトリプルアクセルを跳んだというのは、真央ちゃんにとってこれが確実に跳べるジャンプになったということ。こんなことができる選手はいない。技術の面でも、存在感の面でも。
日本の選手が、女子も男子もどんどん上手になって、見ているだけでとても嬉しいのだが、真央ちゃんの演技を見るととりわけ幸せな気持ちになる。奇跡のような選手を見ているんだと思うから。
だから、現時点での順位なんて本当にどうでもいい。優勝してくれたら嬉しいし、優勝しなかったら来年が楽しみ。
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