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ただひとりあの人だけが

 真央ちゃんのショートプログラムの滑走順が、最終グループの3番目だと知って、真央ちゃんには運があるんじゃないかと思った。

 今の採点法では、滑走順やグループ分けが点数には反映されないようになってはいるが、人間は前のことより後のことが印象に残るから、依然として最終グループが有利だとされている。
 だったら最終グループの最終滑走が一番いいじゃないかということになるが、最終滑走はウォームアップから30分以上時間が空いてしまう。3番滑走というのは、呼吸を整えて、一番いい状態で氷の上に立てる順番だ。

 これはあくまでも自分のことだけを考えた場合。3番滑走ということは当然直前に誰かが滑り、その点数や歓声を聞きながら自分の出番を待つことになる。きょうの2番滑走は安藤美姫ちゃんだった。

 美姫ちゃんの演技は素晴らしかった。ひとつひとつの要素をとても丁寧に滑っていたし、気持ちも力もこもっていた。演技が終わると同時に場内のほとんどの観客が立ち上がった。簡単には立たない私も立った。去年のトリノの状態から、よくぞこれだけの演技ができるまで頑張ったなと心から思った。
 真央ちゃんはその大歓声の中リンクに滑り出し、美姫ちゃんの点数が出るまでの間足慣らしをしていた。日本人選手だし、そのことは真央ちゃんには何の影響も与えなかったと思う。

 場内大興奮の中、得点に続いて順位がアナウンスされた。

「現在の順位は、第2位です」

 真央ちゃんはこれを聞いただろうか。あるいは、観客の声が興奮からどよめきに変わるのを感じとっただろうか。観客のほとんどがスタンディングオベイションをした演技が2位ということは、あの選手はもっと素晴らしい演技をしたということになる。真央ちゃんはそのことに気づいただろうか。

 それより前の6分間練習で、真央ちゃんは3フリップ+3ループを、いつもよりも多く繰り返した。フリップを2度単独で跳んだあと、ステップからのルッツを2度降りた。それからフリップのコンビネーションを跳ぼうとしたが、2つめに続けられなかった。もう一度やろうとしたが、跳ぼうとした場所に他の選手がいたのでやめてまたやり直して成功させた。ちらっと残り時間を見てもう一度試みてまた成功させ、最後に再びルッツを跳んだ。
 コーチのところにも行かず、いつもよりジャンプを繰り返しているな、と思ったが、最終的には全部降りたのでほっとした。今思えば、真央ちゃんはコンビネーションをとても気にしていたのかもしれない。

 最初のルッツを降りて、次は今シーズンショートプログラムではミスしていない3フリップ+3ループ。最初のフリップがほんの少し後ろに傾いた。そして次のループはシングルになった。6分間練習で失敗したときと同じような感じになった。

 真央ちゃんが今、唯一意識をしてしまう選手はキム・ヨナしかいない。キム・ヨナも同じだろう。別の言い方をすれば、他の選手はおそらく真央ちゃんの頭には無いだろう。同世代で、キム・ヨナ以外には負けたことが無いのだから。

 きょうの時点で10点以上差がついてしまった。とにかく真央ちゃんは、自分の演技をちゃんとやるしかない。それで結果がどうなろうと、すべてこれからの糧になる。

 こんなことを書きながら、本当は残念で仕方がない。でも、真央ちゃんには未来があるから、その過程もひっくるめて応援するしかない。そう思っている。
 明日、真央ちゃんがどんな演技をしてくれるのか。順位はもうどうでもいい。この状況から、明日どんな演技をするのかだけが楽しみだ。ちなみに明日の最終グループ、第3滑走がキム・ヨナ、その後が真央ちゃん。この2人はこういう運命にあるのだろう。

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