日米対抗 男子の感想
全般的にミスが多い試合だったが、時期を考えればこんなものだろう。選手達にはそれぞれの課題があり、それを試してみたり、また新たな課題を見つけるための大会で、勝ち負けはオマケ。メンバー的には世界選手権のメダリストが3人いるのだから、日本が勝って当たり前という感じだけど。
町田選手の「白鳥の湖」は、日本男子に若い王子様登場、という感じであった。この曲で白とブルーの衣装、というのを照れずにやるだけで日本人にはハードルが高いと思うが、やれるのが素晴らしい。
最初の3アクセルのコンビネーションと次の単発の3アクセル、どちらも膝を柔らかく使ってなんとか降りた。膝が柔らかいのはいいことなのだが、ほとんどしゃがみこむような形でこらえたので筋肉への負担が大きい。そもそも3アクセルを2度入れることが体力を使うことだから、後半すっかり疲れてしまった。ラストのポーズをこらえる力も残っていなかったという感じ。思わず「ああお疲れさま」とつぶやいてしまった。
記者会見では「きょうの出来は30点以下」と反省しきりだったけれど、シニア選手が出場する国際大会で2本アクセルを決められたのは、きっと自信に繋がる。
中庭選手は「ぶっちゃけものすごく緊張していた」そうだ。半ばお祭りのような試合とはいっても、日本での大会だし、テレビ中継はあるし、対抗戦だし。そんな中4トゥループのコンビネーションをなんとか降りたのはよかった。
男子選手の記者会見の最中にジャッジスコアが配られて、自分の評価を見た中庭選手は「あちゃー」という顔をした。ステップで正しくエッジに乗ることを練習してきたが、評価がレベル1だったからだ。でも「ステップのレベルを上げたいし、5コンポーネンツも1点ずつ上げたい」と前向きな課題を自らに課した。
中庭選手はもう25歳(15日で26歳)になっているが、きっとどんどんスケートが楽しくなっているのではないだろうか。長久保コーチに見てもらってジャンプの確実性が高まったり、スケーティングの質が上がった。男女ともに、ほんの数年前までは大学を卒業したら引退するのが当たり前だったが、中庭選手は大学を卒業してからぐんと伸びた。素晴らしいことだと思う。
南里選手はジャンプのタイミングが完全に狂ってしまった。「最悪の演技」と記者会見で申し訳無さそうに話したが、その分ステップはちゃんとやらなければと思ったそうで2つのステップシークエンスはともにレベル3。
色白で端整な顔立ちなので、正統派のものが似合うんじゃないかと思っていたが、やっぱり似合う。去年の全日本の最終グループは、南里選手を含めて本当に見ごたえがあったが、日本選手はここ数年アイスショーで滑る機会が増えて、氷の上で照れずに自分を表現できるようになってきている。今回は残念ながらジャンプの失敗が目立ってしまったが、堂々と「月光」で滑りきったらとてもいいと思う。
選手の取材ができる場所は、記者会見の他にミックスゾーンでの囲み取材がある。囲み取材は、記者会見のようにお互いがマイクを持ってやりとりをするのではなく、選手と近い距離で肉声のやりとりができる。本音が聞きやすいのだ。
高橋選手の囲み取材が始まろうというとき、記者の輪の外にいたモロゾフコーチが高橋選手を呼び、何かを言っていた。何を言ったのかと記者が尋ねたら「4回転を2回入れることが今回のチャレンジで、これからのために必要なこと」だと改めて言われたということだった。練習では全てのジャンプをちゃんと降りていたが、この時期にプログラムの中で決めるのは難しい。モロゾフコーチが伝えたかったのは、チャレンジをしたのだから、失敗したからといってネガティブなことを言わなくてもいい、ということだろう。つくづく思慮深いコーチだと思う。
今シーズン明らかに変わったのはシットスピンだ(今変換したら嫉妬スピンと出たが、面白いな嫉妬スピンって。どんなスピンだか)。今シーズンから、シットスピンが「尻がスケーティング・レッグ(氷に接している足)の膝の高さを超えない」とルールで明確に定義された。これはかなり深く膝を曲げるか、しゃがみこまなければできないが、高橋選手はどちらも苦手だった。しかし今シーズン、尻をしっかりと下ろすポジションのスピンを入れてきた。
ただ、スピンをしながら完全にしゃがみ込んでそこからまた立ち上がるのはとても筋力を使うので、全部のスピンにはこのポジションはなかなか入れられない。その他にもレベル判定の要件が満たせず、4つあるスピンはレベル1から2という判定になった。高橋選手自身も「スピンのレベルがやばい」と言っていたので、この辺はこれから修正されると思う。
表彰台の高いところ、というだけでなく、高橋選手とモロゾフコーチは、スケーターとしてもとても高いところを目指している。今シーズン、このプログラムがどこまで進化するのかとても楽しみだ。
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