バカじゃないの?
静岡空港のことについては検索すればいろいろ出てくると思うので、興味がある方は調べていただきたい。ざっくりと説明すると、空港建設に反対している土地の持ち主(だけでなくたくさんの県民が空港はいらないんじゃないかと思っていたのだが)の土地を、土地収用法により強制的に取り上げ(もちろん土地代は支払っているが)来年3月の開港を予定していたが、あれこれ騒動を起こして収用した土地の測量にミスがあったために、開港が延期になった。
要は、土地収用法によって空港周辺の土地を取り上げて空港を作ったのだが、取り上げなかった土地の中に、航空法で決められている高さ制限(離陸や着陸のコースに支障が出ないよう、周辺の土地や建物などの高さが決められている)に引っかかる立ち木があったということだ。
このままでは飛行機が飛ばせないので、静岡県は2500mの滑走路を2200mで運用する状態での開港を決めたが、それでも誘導灯などをあらたに移さなければならないので、来年3月の開港を延期した。
ひとことで言うなら「バカじゃないの?」ということである。「噂の東京マガジン」によると、土地の高さについては航空レーダー測量だけをして、実際に土地に入って測量することはしなかったのだそうだ(土地収用法では収用する土地の現地測量は認められている。いくら反対行動があっても法律でできるということ)。しかも、土地を取られた所有者が「測量がおかしいんじゃないか」と2年前から言っていたのにそれには取り合わず、ある日突然「地すべり防止工事が必要なので」と言ってきたのだとか。つまり、測量ミスを隠したまま、どさくさにまぎれて立ち木を切ってしまおうということだ。
私が土地の所有者なら、まぁ許さないわなぁ。ただでさえ先祖代々の土地を取られた挙句、測量のミスを認めず、なし崩しの状態で、また自分の土地にある木を切ろうというのだから。
この空港が世の中の役に立つ空港ならまだしも、開港前の時点で年間3億円の赤字が避けられない空港なのだそうだ。どうしてわかるかというと、飛行機は飛ばす便数と機材で、年間に何人運べるかがはっきり出せる乗り物だからだ。便数が増えるか機体が大型化しないと運べる人数は増えない。でもそれをやろうというエアラインはない。そもそも、どれだけの人が静岡空港を利用するかがわからない。大体にして、日本の地方空港のほとんどが赤字なのだ。
2500mの滑走路を2200mで運用するために、誘導灯を移設しなければならない。この工事にあらたに1億円以上がかかるのだそうで、先日県議会で可決された。
問題はそれだけではない。日本のほぼすべての空港には、ILS(計器着陸装置)がある。悪天候で視界が悪くても、電波で誘導することによって着陸ができるシステムだ。当然静岡空港にもILSは設置されているが、滑走路が短くなるとこれが使えない。つまり、すべての航空機が目視で着陸しなくてはならない。雲があって滑走路が見えなかったら着陸できないのだ。ということは、発着率が落ち、乗客数が落ち、結局は利用者が減る。まったくもってバカ空港ということだ。
当初静岡県の石川知事は、記者会見で「測量当時よりも立ち木が伸びた」と説明した。それは報道を見る限りウソなのだが(そんなことは最初からわかっているべきことだから)、立ち木が伸びることだけはウソではない。「噂の東京マガジン」によると、現在の立ち木の高さと、2200mの長さの滑走路に認められている高さ制限には30センチたらずほどの差しかなく、このままだと2年後には木が伸びて高さ制限に達してしまうのだそうだ。
誘導灯を移しても、2年か3年後には木が伸びて滑走路が使えなくなる。こんなことに1億円も使うなんてまったくばかげている。でも知事にとってはばかげたことではないのだ。何故なら、石川知事は東大法学部を出て自治省に入り静岡県知事になった根っからのお役人で、「ミスを認めない」とか「ミスを認めないことに由来する支出は当然」という意識の持ち主だからだ。
ざっくりと書こうと思ったのだけれど長くなってしまった。私が今回の報道でいちばんビックリしたのは、これだけたくさんの人を巻き込んでこじれてしまった静岡空港が開港するための費用が、1800億円ということであった。
麻生総理が全国民にばらまくお金の総額が大体2兆円だ。2兆円という金額がどういうものなのかまったく想像がつかなかったのだが、あんなばかげた空港を10作ってもまだ余る、という金額なんだなーと改めて思った。
この人たちには、国のお金を大事に使う(もとは国民から集めた税金だから)などという発想はまるでない。断言できるのは、私が元国家公務員だったからだ。といってもたかだか4年、高卒の職員として働いただけだけれど、現場の職員はともかくトップにはコスト意識なんてものはまるで無かったし、そういうシステムにはなっていなかった。
麻生さんは今、金融危機に乗じて「日本ができること」を世界にアピールしようとしている。でも、日本の屋台骨は麻生さんが思っている以上にグラグラだということにはまったく興味がなさそうだ。だから「医師には社会的常識がかなり欠落している」などというわけのわからないことを言ってしまう。
医療のことを書き出すと長くなるからもうやめて寝るけれど、こんな私の書いた文章を読んで「バカじゃないの」と思う人はたくさんいるんじゃないかと思う。私だってそう思ったから書いたんだし。
いい家のお坊ちゃんは大きなことを考える。「美しい国」とか、「日本のバブル崩壊の経験を世界に活かして」とか。
でもねぇ、世の中それどころじゃないんだよねぇ。私は別に、いい家のお坊ちゃんに偏見は無いつもりだけれど、ここのところそういう総理大臣が続いているから、総理大臣についてはしばらくお坊ちゃんはご勘弁という感じ。
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