カニの呪縛
先週はカニに翻弄されてしまった。
木曜日の生放送後。その日の放送の反省会をしたあと、翌日の放送の打ち合わせをするのだが、金曜日は鳥取県の境港と米子の特集だった。
冬の境港といえばカニだ。台本によると、リポーターの関口さんが、松葉ガニや紅ズワイガニをさまざまな食べ方で堪能していて、それをディレクターと関口さんが事細かに説明してくれるのだが、いかにカニがおいしかったか、という話だけを延々聞かされると、もうため息しか出ない。大島さんが「なんか拷問よね」と言ったがまったくその通りであった。
打ち合わせが終わって局を出たら、ものすごくカニが食べたくなった。かといって一人でカニ料理店に行く気も無い。もやもやした気持ちを抱えたまま、帰り道の途中にある大きな魚屋さんに行った。そこには絶対カニがあるから、値段を見て考えようと思ったのだ。
鳥取から送られた生松葉ガニがあった(ちなみに松葉ガニというのは、山陰沖で収穫量を守って獲られたズワイガニのことを言う。これが福井で揚がれば越前ガニと呼ばれる)。小さいものが3千8百円、大きいものが7千円であった。でも一人でカニ1杯は食べられないし、1人で食べる値段じゃないのであきらめた。でもカニは食べたい。うーん。
ロシア産の茹でタラバガニとかそういうものもあるのだが、どっちにしろでかい。ふと横を見ると、セイコガニとかコウバコガニと呼ばれる、茹でたズワイガニのメスがあった。
体が手のひらぐらいの大きさなので当然身も少ないのだが、メスだけあって卵があるしカニみそもおいしい。地元の人はこちらを買ってよく食べると聞いたことがある。
たくさん食べたいわけじゃないんだからこっちでいいんじゃないかと思って、1杯580円のセイコガニを買った。そういやカニスプーンを持ってないなぁと思い、100円ショップに寄って買って帰った。
母がカニ好きだったので時々食卓にはのぼっていたが、考えてみたら食べやすくなった状態のカニしか食べたことがなかった。小さいとはいえ丸ごとのカニを買ったのは初めてで、カニをどうやって切り分けたらいいのかがわからない。
インターネットのヤホーで「カニ 食べ方」と入力して検索した。なんでもわかるからありがたいねぇ。
というわけで、一人黙々とカニを食べた。量は多くはなかったが、カニを食べたいという欲求は満たされた。
これで十分のはずだった。
生放送で初めてVTRを見た。松葉ガニの刺身、焼き、そして紅ズワイのしゃぶしゃぶ。見ながら大島さんも私もずっと無言であった。心の底からうらやましかった。ロケだからいろいろと大変なことはあっただろうし、土日でロケに行っているから関口さんは休み返上なのだ。それはわかっているがとにかくうらやましい。
後日、番組を見たみかちゃんに「今ちゃんさー、ほんとに素だったよねー。最後に『あーお腹すいた』って言ってたから大笑いしたよ」と言われたが、なんというか、テレビに出ているとかそういうことよりも、とにかくカニが食べたくて食べたくてしょうがなかったのだ。
翌日はかつしかFMだったので、週末だが家に帰って準備をしなければならない。でもどうにもこうにもカニが食べたい。ちゃんとしたカニが。
というわけで2日続けて魚屋に行った。また7千円の松葉ガニがあった。思い切って買おうかと思ったが、どう考えても食べきれない。ふと見ると、生のズワイガニの足だけが十数本カゴに入って千円で売られている。足だけだからカニみそは無いが、メインの脚肉は十分に楽しめる。よしこれだ。
またしてもインターネットのヤホーで(しつこいよ)焼きガニのときは包丁で片側の殻を削ぎ落とすというのを調べた。削いだ殻とか足先は、軽く焼くといいダシが出ると書いてあったのでその通りにして、足の真ん中のところは蒸して食べることにした。
焼き、蒸し、しゃぶしゃぶ、最後に野菜を入れてカニ鍋。私なりに思い切りカニを堪能した。
大島さんにこのことを話したら「え、一人で家でカニ食べたの? 複数で食べても無口になるのに、家で一人で食べたら寂しくない?」と言われた。言われてみて初めて気づいた。確かに2日続けて一人家で黙々とカニを食べていたのであった。
でも欲求が満たされたから寂しくない。それよりも、今までそんなにカニに執着は無いつもりだったのだが、改めて自分がいかにカニが好きかに気付かされた。
つくづくカニアレルギーじゃなくて良かった。カニアレルギーの方には本当に申し訳ないが。
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