上海の国際空港は浦東国際空港。成田からの直行便が発着する。上海の市街までバスやタクシーでは1時間ほどかかるが、地下鉄の龍陽路駅まで直行のリニアモーターカーがある。
所要時間はたったの8分。龍陽路駅から地下鉄に乗り換えて、上海の中心部まで15分ほど。乗り換えがちょっと不便といえば不便だが、成田に移動するよりはずっとずっとましだ。
ちなみにこのリニアモーターカー、最高時速が430km。
ほんの数分で最高速度に達するのだが、周りに何もないのでなかなか早さが実感できない。龍陽路駅につくちょっと手前でビルや街並みが見えてきて、速度がゆっくりになったので「もう着くんだな」と思って速度表示を見たらまだ130kmもあった。飛行機で空を飛んでいても速さが実感できないのと同じ。
上海にはもうひとつ、国内線が主体の虹橋空港がある。羽田との定期チャーター便はこちらに発着する。虹橋空港から市街まではバスやタクシーで30分、浦東空港とはノンストップバスで20分ほど。
前原国土交通大臣が「羽田空港のハブ化」について発言したら、あちらこちらから様々な意見が出た。でもこうして海外の大きな空港に来ると、成田のハブ化とか羽田のハブ化とか、もうちゃんちゃらおかしいという気になる。
ハブ空港というのは、その空港を拠点にして他空港へ乗り継ぐための空港。ハブというのは自転車の車輪の真ん中で、そこから四方に出ているのがスポーク。乗り継ぎ空港を集約することで効率的に運行が図れる。
日本国内なら羽田がハブ空港だ。例えば秋田から鹿児島に行く場合、直行便はないが、羽田で乗り継ぐことができる。日本のほとんどの空港は羽田便があるので、羽田なら国内のたいていの空港には行ける。しかし羽田から海外への便は、今のところ限られている。大半の国際線は成田発着なので、羽田は国際線のハブ空港ではない。
日本の地方都市にとっての国際線のハブ空港は、事実上韓国の仁川国際空港になっている。
大韓航空が乗り入れている日本の空港は、東京と大阪以外にも札幌、函館、青森、秋田、新潟、小松、静岡、名古屋、岡山、福岡、大分、長崎、鹿児島がある。アシアナ航空は、東京と大阪以外に旭川、仙台、福島、富山、静岡、名古屋、広島、米子、高松、松山、福岡、熊本、宮崎、沖縄に直行便がある。
こうやって改めて並べてみると、両方で日本のほぼ全ての地域をカバーしているのがわかる。それに対して、成田への直行便がある国内の空港は、東京、大阪、札幌、福岡、広島、那覇の6空港に過ぎない。
地方の人にとっては、国内線で羽田に行き、わざわざ成田へ移動して国際線に乗るよりも、地元の空港から仁川空港を経由して海外に行く方がずっとラクだ。
しかも仁川空港は、乗り継ぎ客のための設備がとても充実している。広大な免税店、サウナとマッサージに仮眠室まであるスパ、さらにはカジノや9ホールのゴルフコースまである。多少乗り継ぎに時間があっても十分に楽しめる。
こういう「乗り継ぎのための利便性」を考えてこそ、国際ハブ空港といえる。実際、国際空港ランキングではこのところずっと「最優秀空港」という高評価を得ている。
上海の浦東空港は、仁川空港ほど設備は充実していないが、とにかく大きい。ターミナルは気が遠くなるほど横に長く、さらにもう一つある。
滑走路は、4000m、3800m、3400mの3本が並行してあるので、数多くの飛行機を効率よく離発着させられる。仁川空港も、滑走路は4000mと3750mが2本の計3本が並行してある。どちらの空港もさらに滑走路を増やす計画があり、すでにその土地は確保してある。そしてどちらも24時間運用できる。
さて、成田空港はといえば。
1978年の開港以来、4000mの滑走路が1本だけという状態で過密運用をしてきた。2002年にようやく2本目の滑走路が運用開始したが、土地の買収が進んでいなかったので2180mという中途半端な長さになった。これでは国内とアジアの近距離線しか離陸できない。長距離便はたくさんの燃料を積んでいるのでとても重く、そのため離陸には長い滑走路が必要になる。ようやく2500mになったのが去年の10月だが、それでもアメリカ東海岸やヨーロッパ向けの便は離陸できないし、確保できた土地にとりあえず作った滑走路で、ターミナルから遠く使い勝手が悪い。
そして最大の弱点は、騒音問題から夜間の飛行ができないこと。
地元の反対を押し切ってむりやり成田に空港を造ったものの、空港内には未買収の土地が残っていて滑走路はなかなか伸ばせない。大体にして都心から遠すぎるし、夜間使えない空港は発展の余地がない。
結局、成田空港は世紀の大失敗だったのだ。そもそもここに空港を造ったのが間違いだった。今から何をどうやったって、成田は国際ハブ空港になどならない。そもそも国際空港としてレベルが低い。
シンガポールのチャンギ空港、タイのスワンナプーム空港など、他にも国際ハブ空港として整備されている空港はある。今後、羽田空港に4本目の滑走路ができたとしても、そもそも飛ばせる国際線の数は限られている。それに4本の滑走路は並行ではなく井桁のような形になっている。
滑走路が並行に並んでいるのと、井桁の形になっているのとでは運用の仕方が違う。つまり、羽田は4本全ての滑走路を同時に使えるわけではないのだ。これでは国際ハブ空港になどなれやしない。
ここから得られる教訓は、国は平気で間違えるということ。しかも、間違いを決して認めないし、決してやり直さないということ。
間違えたことは他にもたくさんある。それをどうにかしようということで政権が代わった。長い時間をかけて間違えてきたものを、半年や1年でどうこうできるわけがない。別に総理大臣は誰でもいいが、もっと間違いを修正できるまでは、簡単にもとの政党に政権を戻してはいけない。いとも簡単に、従来のやり方に戻り、そしてまた間違えるから。
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