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思い出した

男子ショートの結果を見て思い出した。トリノ五輪の女子ショートのことだ。

ショートで1位に立ったのはアメリカのコーエン。2位はロシアのスルツカヤで、3位が日本の荒川選手だった。

コーエンはノーミスの完璧な演技をした。スルツカヤと荒川選手は、トリプルトリプルを予定していたが、ともにトリプルダブルに変えた。上位6人の点数はこうだった。

66.73 コーエン
66.70 スルツカヤ
66.02 荒川
61.75 村主
59.40 マイズナー
57.90 ゲデバニシビリ

上位3人が頭ひとつ抜けていて、3人の点差はわずか。3位は日本の荒川選手で、ちょっと点差は開くが4位も日本の村主選手だった。

フリーの滑走順は、コーエン、荒川、スルツカヤの順(間に他の選手がいたが)。ノーミスでフリーをやったことがないコーエンは6分間練習から動揺していて、フリーではジャンプで2度転倒した。荒川選手の演技については言うまでもない。そしてスルツカヤは、いちばん得意なトリプルループで転んでしまった。

さて、きょうの男子ショート。

復活したロシアのプルシェンコは、高い4回転+3回転をはじめ、ジャンプは全部飛びきったが、あとはおまけみたいな演技だった。ステップはエッジが浅く、パタパタしていてスピードが出ない。

日本の高橋選手は、コンビネーションジャンプの最初のフリップの着地がちょっと詰まってしまったが、全体としてはきちんとまとめて、特にステップシークエンスはステップだけじゃなく、上体の動きや表情までの全てが表現になっていた。ストレートラインステップはレベル4だったそうだ。

アメリカのライザチェックは、全ての要素をこなして完璧な演技をした。神がかり的といってもいいような演技で、まだショートプログラムなのに演技終了後泣いていたほどだ。

さて順位。

90.85 プルシェンコ
90.30 ライザチェック
90.25 高橋
84.85 織田
84.63 ランビエール
82.10 ウィア

さっき書いたトリノのときの文章の、名前を入れ替えるだけでいいという結果になった。

上位3人が頭ひとつ抜けていて、3人の点差はわずか。3位は日本の高橋選手で、ちょっと点差は開くが4位も日本の織田選手だった。

ついでに言うと、トリノのではショートを終わって8位が安藤選手だったが、今回は小塚選手が8位。あと、上位3人のフリー最終グループの滑走順は、ライザチェック、高橋、最終演技がプルシェンコ。アメリカ、日本、ロシアでロシアが最終滑走という順番も同じ。

まぁ、これは今回のフリーの演技とは直接関係無いことだ。でも、それぞれの順位や立場において考えざるをえないことに差があるという意味では、トリノの女子ととても似ている。


プルシェンコは自分では完璧な演技をやり、高い点数も出た。でも終わってみたら、4回転をやっていない選手が、自分とそれほど変わらない点数を出していた。きっと点差が少ないのに驚いたと思う。だから演技後の会見で、4回転にこだわった発言をしたんだろう。

ノーミスの演技をしたにも関わらず、プログラムコンポーネンツはランビエール、ライザチェック、高橋、さらに7位のパトリック・チャンよりも低い5番目だった。プログラムコンポーネンツは今から対策を立てることができない。他の選手がこの3シーズン頑張ってきたこととはっきり差がついてしまった。だからこそ、ジャンプでは絶対にミスができないと思っているだろう。4回転を決めるのは当たり前で、それ以外の全てをやらなければ勝てない。


ライザチェックは素晴らしい演技をした。感激して涙を流していたが、まだフリーがあるのだから、泣くのは早いと正直思った。

彼はきっと、きょうのような演技をフリーでもやろうと思うだろう。そしてやらなければならなくなった。全米選手権でライザチェックに勝って優勝したアボットが、ジャンプのミスを連発してメダル圏外に去った。昨シーズンの世界チャンピオンとして、そしてアメリカの代表として、絶対にメダルは持って帰らなければならない。

決してジャンプが得意なわけでもないし、スピンが得意なわけでもない。トータルバランスに優れているのがライザチェックだ。取りこぼしができない、絶対にミスできないことは自分がよくわかっているだろう。だから、きょうのような演技ができたことに涙したのだ。


高橋選手は、今シーズンいちばんの演技をした。でも本人のベストではなかった。フリーでは自分のベストの演技をするのが目標だと思うし、実際「メダルとか順位はともかく、きょうみたいに自分の演技を」とインタビューで言っていた。

復帰できるかどうかわからないまま必死にリハビリをして、やっと氷の上に戻ってきた。いちばんの目標は「コーチを泣かせること」だそうだ。そして今年のフリーの作品は、コーチだけでなくたくさんの人を感動させられるような、素敵で素晴らしいものになっている。

4回転は練習でも調子が上がっているそうだから、きっと挑戦するのだろう。でも、目標はそこではない。スケーターとして集大成になるような、たくさんの人の心に残るような演技を目指しているんだと思う。順位がどうだろうと、そういう演技をしてくれたら、きっとみんな満足だ。


いろいろ書いてみたが、さあどうなるか。私が楽しみなのは、高橋選手とランビエールのフリーだ。どちらも素晴らしい作品だから、点数とか順位はともかく、滑りきって踊りきってくれたら嬉しい。

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