初めての
ものすごく興味があるのか、と改めて問われると、正直言ってわからない。でも、もし機会があったならば、一度は体験してみたいと思うことがいくつかある。
「すきやばし次郎」でお寿司をいただく。屋形船に乗る。オペラを観る。豪華客船で旅をする。あとなんだろう。まぁ総じて「贅沢なことをやってみる」みたいなことだろうか。
ひとつだけ、それらとはまったく違うジャンルで、一度体験してみたいものがあった。宝塚だ。
宝塚のことはみんな知っている。でも、実際のところ何が行われているかを実際に見て知っている人は多くない。どんなものだか、一度は観てみたいとずっと思っていたのだ。とはいっても、じゃあ行きましょう、とはなかなかならない。大体にしてチケットが取れないし、男一人で行っていいかどうかわからないし(別に問題はないんだけど)。
スタイリストさんのお知り合いが、雪組の未来優希さんのお母様で、チケットを取ってもらえそうなんだけどどうですか、と声をかけてもらった。「レディス4」の関口さんと松波さんも行くという。この機会を逃すと一生行けない気がしたので、行ってみることにした。
大島さんは長年の宝塚ファンだ。「レディス4」では渡辺さんもベルばらの頃から観ている。2人に「宝塚を観に行くことになった」と言ったら、まったく同じアドバイスをもらった。要約するとこういうこと。
「あれこれ疑問に思わず、ここは夢の世界なんだと思って、没頭してね」
私と関口さんは初めて、松波さんは二度目の宝塚だったが、松波さんの記憶があいまいなのでまったくあてにならなかった。大急ぎで打ち合わせを終えて、劇場近くのそば屋で「いちばん早いメニュー」というので山菜おろしそばを頼んで、3人で「これから夢の世界に行きましょう」と気の持ちようの確認をした。公演は3時間だと聞いていたので、松波さんが「あたし眠くなっちゃったらどうしよう」と心配そうに言った。ふと見ると、テーブルの上に梅干しのようなものが小分けに袋詰めされたものが置いてある。どうやらタダらしい。
「もし眠くなったらこれ食べよう」と言ってひとつずつ取った。たぶんいちばん不純な観客だったと思うが、なにせ初めてだから不安がいろいろあったのだ。
お母様に入口でチケットをいただき席に行ってみたら、なんと前から2列目のSS席だった。こんな席きっと取れない。未来さんは今回の公演で退団なさるから、そういうこともあったのかもしれない。
そして舞台の幕が空き、いきなりたくさんの人が舞台上にいたので、私達3人は思わず「わー」と声を出してしまった。でもそんな人は周りにはいなかったので一瞬じろっと見られてしまった。
ここまでのことは初心者なので、宝塚ファンの方はお許しいただきたい。率直に感想を言えば、私達は3人とも宝塚を堪能した。楽しかった。
なんというか、見てくださる方へのサービス精神というものが、こんなにてんこ盛りの舞台は初めてだった。前から2列目だから余計にそう思ったのかもしれないとちょっと思ったのだけれど、でも前から2列目だからよくわかった。トップスターの皆さんは、すべての席にまんべんなく視線を送っていた。ありがとうという気持ちを込めて、何ひとつ分け隔てなく。
2部のレビューは、歌も踊りもレベルが高かったし、若い団員の皆さんのラインダンスとか、いつの間にか舞台に階段が降りてくるとか、トップスターが着けている羽根とか、とにかく「ああこれこれ~!これが生で見てみたかった~!」というのがたくさんあって、見ごたえたっぷりだった。かっこいいのだ。
今後私達3人が、こんないい席で宝塚を観ることはきっとないだろう。でも、観て良かった。究極のエンターテインメントだな。ひたすらに楽しんでいただくんだもの。
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