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思い遣る気持ち

きょうは計画停電の影響で、電車の本数がとても少なかったので、通勤時間帯は殺人的な混み方だった。それでも電車が動くだけましで、列車の運行そのものをとりやめた路線もある。帰りの電車もとても混んでいて、駅に着くたびに人が乗ってきて押されるので、私のかばんが、前に座っている中年男性の膝にどうしてもぶつかってしまう。なんとか持ちあげようとしていたら、男性が「ひざに載せていいですよ」と言ってくれた。リュックを体の前に背負うような形で抱えたらなんとかなったので「ありがとうございます、大丈夫です」とお礼を言ったら「大変ですよねぇ」と言われた。思わず顔を見合わせて笑ってしまった。

地震のあった金曜日。家の方向がだいたい同じだから乗っていきませんか、と言ってくれたスタッフの車に乗せてもらって局を出たが、大渋滞にはまって車がまったく進まない。あんな渋滞も初めてだったし、東京であんなにたくさんの人が歩道を歩いている光景も初めて見た。そんなわけで、家の近くにたどり着くまで3時間以上かかった。そこから歩いて帰る途中、道端にお盆を持って立っている男性がいた。なんだろうと思って視線を向けたら「おにぎり食べますか?」と声をかけられた。お盆の上には、小さなおにぎり、みかん、乳酸菌飲料が載せてあった。歩いて帰る人のために、家にあるものを持って外に立ってくれていたのだ。「近くなので大丈夫です」と丁重にお断りしたが、あんなに寒かったのに、あの方はどのぐらいの時間あそこに立ってくれていたのだろう。

青森では停電で信号機が消えたが、運転していたみんなが譲りあっていたので事故はなかったらしい。突然の地震に停電で、パニックになってもおかしくない状況なのに。

日本人っていいなぁと、こんなときに思う。

青森と他の地域を結ぶ手段は、現在飛行機しかない。これまで主力はエアバスA300-600R(290席)という機種だったのだが、JALが古い機材の更新を進めていることに加えて、東北新幹線が全線開業したことで、青森-羽田便は機材が小型化した。マグドネルダグラスMD-90(150席)もしくはボーイング737-800(165席)で、ひと便あたりの席数が半分近くに減っている。

昨日乗って帰ってきた青森発の最終便は、時刻表ではMD-90になっていたのだが、事前に指定した座席が変更になっていた。機材がA300-600Rに変わっていたのだ。

JALでは名機とうたわれた、ジャンボことボーイング747-400が先日退役した。JALを象徴する機種だったから大きく報道されたが、続いてこのA300-600Rも、ひっそりと消えるはずだった。なぜひっそりかというと、旧JASの主力機種だったから。

いま、青森-羽田便にはこのA300-600Rが1日5往復投入されている。退役予定だった機材を、現在唯一の交通手段が飛行機である青森便のために飛ばしているのだと思う。

昨日の青森発の最終便は、出発が30分以上遅れたが、機長が「青森空港にはいま、キャンセル待ちの方が300人以上いらっしゃいます。できるだけ多くの方を救いたいと思っています。地上係員が手作業で手続きをしています」とアナウンスをしたので事情がわかった。確かに、1階の待合室やロビーには人が溢れていたのだ。それなのに、2つ前の席の年配の夫婦が、出発の遅れに不満を言っていて、ベテランのキャビンアテンダントがそこを通るたびに何度も深々と頭を下げていた。

遅れることに不満があるのはわかるけれど、なんだかものすごくがっかりした。あなたも私も乗れるし帰れる。生きてここにいる。もし遅れるのが不満なら、文句を言わずに乗る人が山ほどいるのだから代わってくれないかと言いたくなった。

まず、今こうして自分が生きていることを思う。そして、他人の事にすべて共感はできなくても、命を失い、家を失い、家族を失い、明日がわからない人がたくさんいる、そのことを思うことは忘れないようにしたい。どうせそんなことしかできないのだから。混んだ電車の中でも、遅れている飛行機の中でも、他の人のことを思い遣れるようでありたいと、つくづく思う。

ところで、気仙沼の親戚は全員無事だという連絡があった。よかった。まだ安否のわからない方がたくさんいるのはもちろん承知しているし、自分だけ喜んでいる場合ではないのもわかっているけれど、でも本当によかった。

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